VPNの利用形態と接続モデルとは?5種類で違いを整理

VPNを導入・見直しする際に多くの人がつまずくのが、「拠点間」「リモートアクセス」「クラウド」などの用語が何を指しているのか分からないまま検討を進めてしまう点です。VPNには、誰がどこから接続するかを示す「利用形態」と、通信の仕組みを示す「接続モデル」という2つの視点があり、これを整理せずに選ぶと構成ミスや無駄なコストにつながります。本ページでは、代表的なVPNの利用形態と接続モデルを体系的に整理し、自社に合ったVPN構成を判断するための全体像を解説します。

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VPNの利用形態と接続モデルを混同すると失敗する理由

VPNを検討している人の多くが、最初につまずくポイントがあります。それが、「拠点間VPN」「リモートアクセスVPN」「クラウドVPN」といった言葉を、なんとなく同じ“VPNの種類”として理解してしまうことです。この状態で話を進めると、要件が固まらないまま製品選定に入り、結果として「使われないVPN」や「運用できない構成」が出来上がります。
まず押さえるべき前提は、VPNには利用形態接続モデルという、役割の違う2つの軸があるという点です。

利用形態とは「誰が・どこから・何に接続するか」

利用形態は、VPNが「どんな場面で使われるのか」を整理するための考え方です。具体的には、接続する主体と接続先を明確にします。
たとえば、本社と支店を常時つなぎたいのか、社員が自宅や外出先から社内システムへ入りたいのか、あるいは社内ネットワークからクラウド上の業務基盤に安全に接続したいのか。ここが曖昧なままだと、後から「その使い方は想定していなかった」というズレが必ず起きます。

利用形態を先に決める=VPNの使い道を固定する

この段階で決まるのは、認証が必要な人数、管理すべき端末の種類、ログをどこまで残す必要があるかといった運用の前提条件です。利用形態は、設計以前に整理すべき“業務要件そのもの”と言えます。

接続モデルとは「どの構成で通信するか」

接続モデルは、VPNをどのようなネットワーク構成で実装するかという設計の話です。拠点同士であればルーター同士をトンネルで結ぶ構成が一般的ですし、個人端末からの接続であれば、ユーザー認証を行い必要なときだけ社内に入る形が採用されます。クラウド中心の構成では、VPNの入口を社内ではなくクラウド側に置く設計も選択肢になります。

視点利用形態接続モデル
何を決めるか使われ方・利用シーンネットワーク構成
主な対象人・拠点・クラウド入口・認証・通信経路
間違えやすい点後から用途が増える運用できない構成になる

この2つを分けて考えるべき理由

利用形態と接続モデルを混同すると、判断の順番が逆になります。たとえば「VPNルーターを置けば安全そう」という発想から入ると、誰がどう使うのかが抜け落ち、社員の端末管理や認証設計が後回しになります。逆に、拠点同士を安定して結びたいのに、個人向けの考え方で始めると、拠点数が増えた瞬間に管理が破綻します。

  • ① 利用形態で「使い道」を決める
  • ② 接続モデルで「実装方法」を決める
  • ③ その後に製品・サービスを選ぶ

この順番を守るだけで、VPN導入の失敗確率は大きく下がります。
次のセクションでは、代表的なVPNの利用形態を具体例とともに整理していきます。

VPNの主な利用形態はこの5つ

VPNは「安全につなぐ技術」という点では共通していますが、実際の使われ方は大きく異なります。ここでは、現場で採用されることが多い代表的な5つの利用形態を整理します。自社の状況に近いものを見つけることで、どの子ページを深掘りすべきかが明確になります。

拠点同士を常時接続する「拠点間VPN」

拠点間VPNは、本社と支店、店舗、工場など、複数の拠点ネットワークを常時つなぐための利用形態です。拠点同士が同一LANのように通信できるため、基幹システムや共有サーバーを各拠点から利用する企業で多く採用されます。一方で、拠点数が増えるほどルーター管理や回線品質の影響を受けやすくなるため、設計段階での整理が欠かせません。

▶︎ 拠点間VPNの仕組み・構成例を詳しく見る

個人端末から接続する「リモートアクセスVPN」

リモートアクセスVPNは、社員のPCやスマートフォンなど個人端末から社内ネットワークへ接続するための利用形態です。在宅勤務や出張が多い企業では欠かせません。ユーザー認証や端末管理が前提となるため、「誰が・どの端末で接続するか」を明確にしないまま導入すると、セキュリティ運用が形骸化しやすい点に注意が必要です。

▶︎ リモートアクセスVPNの特徴と注意点を確認する

クラウド環境を前提とした「クラウドVPN」

クラウドVPNは、AWSやAzureなどのクラウド環境を中心にシステムを構成している場合に検討される利用形態です。社内ネットワークからクラウドへ安全に接続するだけでなく、クラウド側を起点に通信を制御する設計が特徴です。オンプレ前提の考え方のまま導入すると、構成が複雑になりやすいため、クラウド中心かどうかの見極めが重要になります。

▶︎ クラウドVPNの考え方と構成パターンを見る

端末にデータを残さない「VDI × VPN」

VDIとVPNを組み合わせた利用形態は、セキュリティを最優先したい企業で採用されます。業務データはサーバー側に集約され、端末には残らないため、端末紛失や情報漏洩リスクを大きく下げられるのが特徴です。その分、通信品質やサーバー設計の影響を受けやすく、VPNはあくまで“入口”としての役割に徹します。

▶︎ VDI環境におけるVPNの役割を詳しく解説

現場導入しやすい「VPNルーター」

VPNルーターを軸にした利用形態は、小規模拠点や店舗など、現場主導で素早く導入したいケースに向いています。設定が比較的シンプルで、拠点間VPNや簡易的なリモート接続を実現できます。ただし、拡張性や集中管理の観点では限界があるため、将来の拠点増加を見越した判断が必要です。

▶︎ VPNルーター構成のメリット・注意点を確認する

利用形態別に見る接続モデルの考え方

同じVPNでも、利用形態が変われば最適な接続モデルは変わります。ここでは「種類の名前」を覚えるのではなく、なぜその構成が選ばれるのかという設計の理由に焦点を当てます。接続モデルの考え方を理解しておくことで、将来の拡張や運用トラブルを未然に防ぎやすくなります。

拠点間VPNで使われる代表的な接続モデル

拠点間VPNでは、ネットワーク同士を常時つなぐことが前提になります。そのため、拠点のルーター同士にVPNトンネルを張り、通信を自動的に暗号化する構成が一般的です。人が都度操作する必要がない反面、回線品質やルーター性能がそのまま通信安定性に影響します。拠点数が増えるほど、どこを起点に管理するかが重要になります。

リモートアクセスVPNで重視される接続設計

リモートアクセスVPNでは、接続の主役は「人」と「端末」です。ユーザー認証を通過した端末だけが社内へ入れる設計となるため、認証方式と端末管理がセキュリティの要になります。常時接続ではなく、必要なときだけ安全に入る構成が基本となるため、拠点間VPNと同じ発想で設計すると運用が噛み合わなくなります。

クラウドVPN特有のネットワーク構成

クラウドVPNでは、通信の入口が社内ではなくクラウド側に置かれるケースが増えます。社内からクラウドへ、あるいは外部端末から直接クラウドへ接続する設計も選択肢になります。オンプレミス中心の考え方を引きずると構成が複雑になりやすいため、どこを起点に制御するかを最初に決めることが重要です。

VDI環境におけるVPNの役割

VDI環境では、VPNは業務システムそのものではなく「入口」を守る役割になります。端末から直接社内ネットワークへ入るのではなく、VDI基盤に到達させるための経路として使われます。そのため、VPN単体の性能よりも、VDI側の設計や通信品質とのバランスが重要になります。

VPNルーター構成時に意識すべきポイント

VPNルーターを使った構成では、設定の簡単さと導入スピードが重視されます。一方で、拠点や利用者が増えると管理が煩雑になりやすく、最初の設計判断が後から効いてくるのが特徴です。小規模だからこそ、将来どこまで拡張する可能性があるのかを考えた上で接続モデルを選ぶ必要があります。

利用形態接続モデルの考え方注意点
拠点間VPN常時接続・自動通信回線品質と集中管理
リモートアクセスVPN都度認証・端末単位認証と端末管理
クラウドVPNクラウド起点設計構成の複雑化
VDI × VPN入口としての役割通信品質依存
VPNルーター簡易構成・現場導入拡張性の限界

どのVPN利用形態を選ぶべきか判断する3つの軸

VPN選定で迷いが生まれる原因の多くは、「何を基準に決めればいいのか」が曖昧なまま比較に入ってしまうことです。ここでは製品名や機能表を見る前に、最低限整理しておくべき3つの判断軸を提示します。自社の状況をこの順番で整理するだけで、選ぶべき利用形態は自然と絞り込めます。

接続する対象は「拠点」か「人」か

最初に確認すべきなのは、VPNでつなぎたい主体が拠点なのか人(端末)なのかという点です。本社と支店、店舗、工場などを常時つなぎたい場合と、社員が自宅や外出先から一時的に接続したい場合では、前提条件がまったく異なります。ここを混同すると、常時接続が必要ないのに重たい構成を選んだり、逆に人の出入りを想定していない設計になったりします。

「誰がVPNを使うのか」を最初に固定する

  • 拠点同士を常につなぎたい → 拠点間VPNが前提
  • 社員・外部スタッフが使う → リモートアクセスVPNが前提

▶︎ 拠点間VPNの利用シーンを詳しく見る

▶︎ リモートアクセスVPNが向いているケースを確認する

守りたいのは「社内ネットワーク」か「クラウド」か

次に考えるべきは、VPNで守りたい対象がどこにあるかです。オンプレミス中心で社内サーバーを使っているのか、業務の中心がクラウドに移っているのかによって、最適な利用形態は変わります。社内ネットワークを守る発想のままクラウド環境にVPNを当てはめると、構成が不必要に複雑になります。

クラウド中心かどうかで設計思想は大きく変わる

  • 社内サーバー中心 → 社内起点のVPN設計
  • クラウド中心 → クラウドVPNを前提に検討

▶︎ クラウドVPNの考え方と構成を確認する

運用できる人・体制はどこまであるか

最後に見落とされがちなのが、実際にVPNを運用する体制です。専任の情シスがいるのか、兼任担当者なのか、あるいは現場任せなのかによって、選ぶべき利用形態は変わります。高機能な構成でも、運用できなければ意味がありません。

「理想の構成」より「回せる構成」を優先する

運用体制向いている利用形態注意点
専任情シスあり拠点間VPN / クラウドVPN設計・監視の継続
兼任・少人数リモートアクセスVPN認証・端末管理の簡素化
現場主導VPNルーター拡張性の限界

▶︎ VPNルーター構成が向くケースを確認する

▶︎ セキュリティ重視ならVDI×VPNの考え方を見る

ケース別:まず読むべきVPN利用形態

ここまでで、VPNの利用形態と接続モデルの全体像は把握できたはずです。最後に、自社や自分の状況に照らして「どこから詳しく読むべきか」をケース別に整理します。目的に近いケースを選んで読み進めることで、遠回りせずに必要な情報へたどり着けます。

拠点・店舗・支社が複数ある場合

本社と支店、店舗、工場など、物理的に離れた拠点同士を安全につなぎたい場合は、拠点間VPNの理解が最優先です。拠点数や回線環境によって設計の考え方が大きく変わるため、まずは基本構成と注意点を押さえておく必要があります。

▶︎ 拠点間VPNの仕組みと構成例を確認する

在宅勤務・外出先からの利用が多い場合

社員が自宅や外出先から社内システムへ接続する機会が多い場合は、リモートアクセスVPNが前提となります。誰が、どの端末で接続するのかを整理しないまま導入すると、セキュリティ運用が形骸化しやすいため、利用シーンを具体的に想定しながら確認することが重要です。

▶︎ リモートアクセスVPNが向いている利用シーンを見る

クラウド中心のシステム構成の場合

業務システムの中心がクラウドに移っている場合は、従来の社内ネットワーク前提の考え方では整理しきれません。クラウドVPNでは、どこを通信の起点にするかが設計の分かれ目になります。オンプレ前提の延長で考えていないかを確認しながら読み進めると理解が深まります。

▶︎ クラウドVPNの設計思想と構成パターンを確認する

セキュリティを最優先したい場合

情報漏洩リスクをできる限り下げたい、端末にデータを残したくないといった要件が強い場合は、VDIとVPNを組み合わせた構成が候補になります。VPNはあくまで入口として機能し、実際の業務は仮想デスクトップ上で行うという考え方を理解することが重要です。

▶︎ VDI×VPN構成が向くケースを詳しく見る

小規模・現場主導で導入したい場合

専任のIT担当者がいない、できるだけ早く現場で使い始めたいという場合は、VPNルーターを軸にした構成が現実的です。ただし、拡張性には限界があるため、将来の利用範囲をどこまで想定するかを考えながら確認すると判断しやすくなります。

▶︎ VPNルーター構成のメリットと注意点を確認する

VPNはひとつの製品や機能で完結するものではなく、「どのように使われるか(利用形態)」と「どのように構成するか(接続モデル)」を切り分けて考えることで、初めて適切な設計が見えてきます。拠点同士をつなぐのか、個人端末から接続するのか、クラウドやVDIを前提にするのかによって、選ぶべき考え方は大きく変わります。

まずは自社の利用シーンと運用体制を整理し、本ページで該当する利用形態を見つけたうえで、各子ページを読み進めてください。そうすることで、製品比較や具体的な構成検討に進んだ際も、判断軸がブレにくくなります。

VPNの仕組みや役割を基礎から整理したい場合は、以下のカテゴリページから全体像を確認するのがおすすめです。

▶︎ VPNとは?仕組み・役割をわかりやすく解説したカテゴリページはこちら

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